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蝶のように舞い蜂のように刺す!


by aurola_thequeen
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ジュリア伝説(その7)

kasumixさんお呼ばれホームパーティートラバさせていただきます。

伝説は伝説でも、ちょっと番外編になるかな?
時代はかなり下って、私が小学生の頃。
パート先でジュリアさんは一人のマダムと知り合いました。
「パートなんかする必要のない、セレブな奥様なんだけど・・・・」
暇つぶし(!)に来ているというそのマダムは、なぜかジュリアさんを気に入り
「良かったら宅へ遊びにいらっしゃいな。ちょっと遠いから、迎えの車を出すわね」
約束の日の朝、電話が鳴りました。
「おはようございます。○○家の運転手でございます。お迎えに上がりました」

・・・外に出てみると、止まっていたのは

ピンクのロールスロイスでした。

派手な外車に、人が集まってきています。
ウィンドウがゆっくり降りて、マダムが顔を出しました。
「おはよう!さ、乗って頂戴」
「ワンワンワン!」 後部座席には大きなシェパードと三毛猫が一匹ずつ。
犬と猫に挟まれて、ジュリアさんはピンクのシートに座りました。
発車オーライ!
「あの・・・・すごい車ね・・・・・」猫をなでながらジュリアさんが言うと
「これね、日本で3台しかないのよ」とマダムが言います。
1台は華僑の大金持ち、もう1台は、さる大物芸能人、そして3台目がこの車。
「1時間くらいで着くわ」 マダムの屋敷は東京の郊外にありました。

門をくぐると、ドーベルマンとお手伝いさんが迎えます。
(なんだか面白そうだわ♪)こういうときに怖気づかないのがジュリアさんの良いところ。
広いお庭、客間が沢山。「主人の仕事柄、人がたくさん来るの」

天井の高い応接間のソファには、黒猫が寝そべっていました。
「どうぞお楽になさって」 メイドさんがメルローズの紅茶を淹れてくれました。
「・・・折り入ってあなたにお願いがあるの」 マダムが口を開きます。

マダムの家は、代々欧米人をたくさん相手にする仕事で
接待もできるように、こんなホテルのような屋敷なのですが、
しゃぶしゃぶ、すき焼き、お寿司というような「いわゆる日本のご馳走」には飽きてしまっているそうなのです。
彼らは滞在が長くなると必ず「日本の人が普段食べている、ふつうのごはんが食べたい」と言うそうです。

「あなたなら口も堅いし、宅を手伝ってくれないかしら。ふつうのお惣菜でいいのよ」
月に1回、運転手さんの送り迎えつき、材料費とお礼つき。
セレブなお宅で飯炊きバイト。
「お手伝いさんがいらっしゃるのに・・・?」
「あの子はね、フランス料理とデザートは上手なんだけど、ふつうのおかずは作れないの」
!!

と、いうわけで、ひと月~ふた月にいっぺんくらい、ジュリアさんは飯炊きバイトに行くようになりました。
「ほんっとーーに普通のご飯でいいの??」と念を押します。


東京風・甘い卵焼き
伊豆産アジの干物
きんぴらごぼう
ほうれんそうおひたし
豚汁
具なしおにぎり


これを、30人前作りました。
「ステキだわ!久しぶりよこんなご飯!」喜ぶマダム。
お客様がどやどやとやって来ました。半分はフランス人、残りはドイツ人と、香港人。
「ワー、スゴイデスネ」「日本ノゴチソウ?」「どうぞ召し上がれ」

外人さんには珍しいものばかり。
フランスの人は、おにぎりの海苔を指差し、「これ、カーボン紙?」と訊きました。
ドイツの人はごぼうを知らなかったようです。
香港の人は、「日本のおかずって甘いのもあって不思議」と卵焼きに手を出します。
「今日は私のお友達がこれを作りに来てくれたの」とマダムがジュリアさんの背中を押します。

ジュリアさんは拍手で迎えられ、「あなたはプロフェッショナルだ」「レシピが知りたい」と囲まれました。
「えーと、これは、海苔っていってカーボン紙じゃないの。海草を加工したものです」
「海苔は剥がさないで、ご飯と一緒に食べるのよ!」
「ごぼうは根菜で、体に良いから日本人はみんな食べる。」
マダムがジュリアさんの言葉を英語とフランス語に訳します。

豚汁にはお代わりの行列が並び、ベジタリアンのお客様はおひたしときんぴらをお代わり。
「オニギリはなぜこういう形なのか」という質問に、ジュリアさんが
「昔のサムライが戦のときにもって行く弁当はみんなコレだったのよ」と答えると
「オオ、サムライ!ショーグン!」と声が上がり、炊きたてほかほかのおにぎりは瞬く間に無くなりました。

「おいしかった!」「楽しかった!」
「作り方を知りたいので、今度はビデオカメラで録らせてもらえますか?」
外人さんたちご一行はご機嫌で帰りました。パーティー大成功。
「どうもありがとう、あなたのおかげよ!」とマダムはジュリアさんをねぎらいます。
飾ってあったお花を花束にして持たせてくれました。
帰りもまたピンクのロールスです。

「へぇー・・・・・・お前でも人様の役に立つことってあるんだな」
肉じゃがをつつきながら父が言いました。
「すごいお屋敷だったわよ~」
「お金持ちは、貧乏人の食事が珍しいんだネ」と私はお味噌汁をすすります。

ったくうちの家族はホントに可愛くない。
「とっても評判良かったわ!次は、おでんなんかいいわね」とマダムから電話。
来月のパーティーは、おでんのようです。 
by aurola_thequeen | 2005-02-12 12:41 | ジュリア伝説