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蝶のように舞い蜂のように刺す!


by aurola_thequeen
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ジュリア伝説(その2)

夏休みの蒸し暑い日でした。
ああ、今日もかんかん照り。横断歩道に陽炎が立っています。
青信号になりました。
早く涼しいところに行きたいな、と渡り始めたジュリアさんに


右折トラックが突っ込んできたのです。


体は大通りの向こう側に跳ね飛ばされました。
ガードレールを越えて、置いてあった段ボールの山に着地しなかったら、即死状態だったでしょう。
救急車が来ました。ジュリアさんの意識はありません。
一軒目の病院。「設備がないので受入れられません」
二軒目。「ベッドが空いていません」
三軒目。「輸血用の血液がありません」ジュリアさんはRHマイナスなのです。
真夏の午後です。傷口がじくじくと膿み始めます。
四軒目。やっと受入れてくれる病院がありました。都心の大きな大学病院です。
それから12時間の手術が始まりました。
全身打撲。右脚大腿部の複雑骨折と右膝の靱帯損傷。
もっとも大きな傷口からは、破傷風菌が入っていました。

全身麻酔で眠らされたジュリアさんに、きれいな調べが聞こえます。
(・・・ここはどこだろう?)色とりどりの花畑を歩いていました。
ずいぶん硬い花畑です。足音がひびき、踏んでも潰れない花たち。
遠くには、朝日のような夕日のような、きれいな光が見えます。
(あっちに行かなきゃいけないのね)
その時、花の脇から誰かの手が出て、足首をつかまれました。
両足に、知らない誰かの爪が食い込みます。
(助けてえええ!)叫びたくても声が出ません。ものすごい力です。
(いやああああ!)そのとき、声が聞こえました。「・・ちゃん」

「・・ちゃん」「くみちゃん」「くみちゃん!」
「くみちゃん!!死んじゃだめぇぇ!」
ジュリアさんはうっすらと目を開けました。
お母さんの青い顔と、泣きじゃくるお姉さんが見えます。
「久美子が目を開けたよ!」「良かった!!」
「よく頑張りましたね。もう大丈夫だよ」にっこり笑う術衣のお医者様と何人ものナース。
うなずくだけで精一杯です。
「瀕死の大けがだったんだよ。でも助かってよかった。今晩はよく眠りなさい」

その日から、ジュリアさんの長い病院暮らしが始まったのです。
by aurola_thequeen | 2004-11-29 16:33 | ジュリア伝説